ブラジルナッツとは?アマゾンの天然林が支える原料と、アフラトキシン管理の実務を解説

ブラジルナッツとは?アマゾンの天然林が支える原料と、アフラトキシン管理の実務を解説

ブラジルナッツを、栽培ができない理由(ハナバチとアグーチへの依存)、輸出量で世界最大とされるボリビアの産地事情、森を伐らない経済という側面から解説。最大の実務課題であるアフラトキシン管理、突出したセレン含有量、形態別の用途と輸入時の確認事項まで整理しました。

公開日:2026年9月4日 / 南米新聞・南米原料・食と農産物・輸入と貿易 / 最終確認:2026年8月17日(日本時間)

この記事の結論

ブラジルナッツは、アマゾンの天然林に生える高木の種子です。畑で育てているのではなく、森に落ちた実を拾って集めています。

  • 受粉を特定のハナバチに、種の散布をげっ歯類に依存しており、プランテーション化がうまくいかない作物です。世界的に見ても珍しい「野生採集のまま商業流通している」商材にあたります。
  • そのため森が残っていることが供給の前提条件になります。木を伐らずに収入が生まれる仕組みとして、しばしば持続可能な森林利用の例に挙げられます。
  • 名前は「ブラジル」ですが、輸出量ではボリビアが世界最大とされます。ブラジル、ペルーが続きます。
  • 実務上いちばん重要なのはアフラトキシン(カビ毒)の管理です。日本の食品衛生法では総アフラトキシン10μg/kgが基準で、輸入時に問題になりやすい項目です。
  • セレンの含有量が突出して多く、1粒で成人の1日推奨量を大きく超えます。製品設計では摂取目安の表示を検討する必要があります。

ミックスナッツの袋を開けると、ときどき大きくて細長い、断面が三角形のナッツが混ざっています。アーモンドでもカシューでもない、あれです。多くの場合、それがブラジルナッツです。

スーパーの棚に普通に並んでいる商材ですが、この一粒がどこから来ているかを知ると、印象がかなり変わります。畑もなければ、農家が植えた木でもありません。アマゾンの森のなかに自然に生えている高木から、雨季に落ちてきた実を人が拾い集めたものです。

この記事では、ブラジルナッツという原料の成り立ちから、産地の実態、そして企業として扱う際に避けて通れない品質管理のポイントまでを整理します。

アマゾンの林冠を突き抜けて立つブラジルナッツの高木
アマゾンの森の樹冠を突き抜けて立つブラジルナッツの木(ペルー)。周囲の木々より頭ひとつ抜けて育ちます。写真:My Favorite Pet Sitter、CC BY 2.0、出典:Wikimedia Commons

ブラジルナッツとは何か

学名は Bertholletia excelsa。サガリバナ科の常緑高木で、アマゾン川流域の熱帯林に分布します。

まず、木が大きい。樹高は30mから50mに達し、幹の直径は1〜2mになります。周囲の木々を追い抜いて樹冠から頭を出すため、上空から見ると森のなかで目立ちます。樹齢数百年の個体も珍しくありません。

実の形も独特です。木になるのは、直径10〜15cmほどの硬い木質の球体で、現地ではポルトガル語で ouriço(ウリッソ、「ハリネズミ」の意)と呼ばれます。重さは1kg前後になるものもあり、これが50m上空から落ちてきます。収穫期の森が危険だとされるのはこのためです。

割ったブラジルナッツの果実と房状に並ぶ種子
切り開いたブラジルナッツの果実(ブラジル・ジャウアペリ川流域)。硬い外殻の内側に、殻つきの種子がみかんの房のように並んでいます。この種子1つ1つが、私たちが食べる「ナッツ」です。写真:Lior Golgher、CC BY-SA 4.0、出典:Wikimedia Commons

この球体を割ると、なかに10〜25個ほどの種子が、みかんの房のように放射状に並んでいます。この種子ひとつひとつが、店頭で見るブラジルナッツです。つまり「殻を割ると、なかにさらに殻つきの実がぎっしり詰まっている」という二重構造になっています。

なぜ畑で育てられないのか

これだけ商業的な需要がある作物なら、普通は栽培化されます。ところがブラジルナッツは、いまも供給の大半を天然林からの採集に頼っています。理由は、この木が森全体の生態系に依存しているためです。

1つ目は受粉です。ブラジルナッツの花は構造が固く、蜜にたどり着くには花弁を押し開ける力が要ります。これができるのは、体の大きな特定のハナバチ類に限られます。さらにそうしたハナバチのオスは、森に自生するランなどから香り成分を集める習性を持つとされ、ハチがいるためには、ハチが必要とする植物も森に残っていなければならないという連鎖になっています。

2つ目は種子の散布です。落ちた果実の殻は非常に硬く、自然界でこれを割れる動物はごく限られます。中心的な役割を果たすのがアグーチというげっ歯類で、殻を齧って開け、なかの種子を運んで地中に埋めます。埋めたまま忘れられたものが、次の世代の木になります。

つまり、木だけを植えても実らない。森を切り開いて単一栽培の農園をつくると、ハチもアグーチもいなくなり、収量が上がりません。これがブラジルナッツを、世界的に見ても珍しい「野生採集のまま国際商品になった作物」にしています。

拾って、割って、乾かす

収穫の実態は、農業というより採集です。

果実が落下するのは雨季です。この時期に採集者が森に入り、地面に落ちた果実を集めます。集めた果実はその場でナタなどを使って割り、なかの種子を取り出して袋に詰め、集積所まで運びます。

ボリビア・マヌリピ保護区で集められた殻付きブラジルナッツ
ボリビア・マヌリピ国立アマゾン野生生物保護区の集積所。殻つきの種子が広げられ、袋詰めを待っています。周辺コミュニティにとって、この採集が主要な生業になっています。写真:Miguel Jorge Villavicencio Oliva、CC BY-SA 4.0、出典:Wikimedia Commons

ここで重要になるのが時間と水分です。落ちた果実は雨季の湿った地面にあり、放置すればカビが生えます。拾ってから乾燥させるまでの時間が長いほど、カビ毒のリスクが上がります。後述するアフラトキシンの問題は、この工程に直結しています。

その後、加工工場で乾燥、殻むき(脱殻)、選別、必要に応じて薄皮除去(ブランチング)が行われ、規格ごとに分けられて輸出されます。森のなかの作業と、工場の衛生管理という、性質のまったく違う2つの工程がつながっているのがこの商材の特徴です。

主な産地 — 名前と実態のずれ

名前は「ブラジル」ナッツですが、輸出量で見るとボリビアが世界最大とされます。ブラジル、ペルーがこれに続き、この3か国で世界の供給のほとんどを占めます。

そのため現地では呼び方も分かれます。

主な呼称 位置づけ
ボリビア castaña(カスタニャ)、castaña amazónica 輸出量で世界最大とされる。北部パンド県などアマゾン低地が中心
ブラジル castanha-do-pará、castanha-do-brasil アマゾナス州・パラ州・アクレ州など。採取保護区(reserva extrativista)制度と結びついている
ペルー castaña マドレ・デ・ディオス県が中心。有機認証つきの供給に取り組む事業者がある

関連記事:ボリビアという国|アンデスとアマゾンが同居する多民族国家の暮らしと産業を解説

調達の実務では、「ブラジルナッツ」という名前で発注しても、実際にはボリビア産やペルー産が来る可能性があることを前提にしたほうがよいでしょう。原産国は仕様書で明示すべき項目です。

森を伐らない経済という側面

ブラジルナッツが環境の文脈でよく取り上げられるのは、この作物が「森が立っていること」に経済的な価値を与えるからです。

木を伐って牧場や大豆畑にすれば、その土地から一度きりの収入と、その後の別の収入が得られます。一方でブラジルナッツは、森をそのまま残したまま、毎年繰り返し収入を生みます。樹齢数百年の木が現役で実をつけるため、時間軸も長い。

ブラジルでは、この仕組みを制度化した「採取保護区(reserva extrativista)」という区分があります。森林を保全しながら、そこに暮らす人々が採集で生計を立てることを認める枠組みです。

ただし、都合のよい話だけではありません。採集者の取り分は流通のなかで小さくなりがちで、価格の変動も大きいという指摘があります。また近年は、干ばつや森林火災の影響で収量が不安定になる年が出ています。「森を残せば安泰」という単純な構図ではないことは、事実として押さえておくべきです。

関連記事:顔の見える取引が変えるもの|南米の生産者と向き合う

アフラトキシン — 最大の実務課題

ブラジルナッツを商材として扱ううえで、避けて通れないのがこの問題です。

アフラトキシンは、カビ(Aspergillus 属など)が産生する毒素の総称です。高温多湿の環境で穀類やナッツ類に発生しやすく、加熱してもほとんど分解されません。

ブラジルナッツは、先に見たとおり「雨季の湿った森の地面に落ちた実を拾う」という工程を必ず通ります。構造的に、汚染リスクが高い商材です。

日本では食品衛生法により、食品中の総アフラトキシン(B1、B2、G1、G2の合計)が10μg/kgを超えるものは流通が認められません。輸入時の検査で違反が見つかれば、その貨物は積み戻しや廃棄の対象になります。ボリビア産ブラジルナッツでの違反事例も報告されています。

EU向けはさらに厳しく、ブラジルナッツは輸入時の管理強化措置の対象品目として扱われてきた経緯があります。日本向けとEU向けで同じロットが通るとは限りません。

仕入れ側が確認すべきこと

  • ロットごとのアフラトキシン分析証明書(COA)があるか。検査機関はどこか
  • サンプリングの方法(ナッツ類は汚染が偏在するため、抜き取り方が結果を大きく左右します)
  • 採集から乾燥までの時間管理と、工場での水分値管理
  • 選別工程(目視・光学選別)でカビの疑いがあるものを弾く仕組みがあるか
  • 輸送中の結露対策(コンテナ内の温度差で水分が戻ることがあります)

「価格が安いロット」には理由があることが多い商材です。単価だけで比較すると、検査で落ちたときの損失のほうが大きくなります。

セレンという特徴

栄養面で、ブラジルナッツには他のナッツと明確に違う点があります。セレンの含有量が突出して多いことです。

薄皮つきのブラジルナッツの種子
脱殻したブラジルナッツ。薄皮つきのまま流通する形態と、ブランチングで薄皮を除いた形態があります。写真:רנדום、CC BY-SA 3.0、出典:Wikimedia Commons

セレンは必須微量元素で、日本人の食事摂取基準では成人の推奨量が1日あたり25〜30μg程度、耐容上限量が350〜450μg程度とされています。ブラジルナッツは1粒あたり70〜90μg程度を含むと報告されており、数粒で推奨量を大きく上回ります。

これは強みでもあり、注意点でもあります。少量で機能を訴求しやすい一方、「たくさん食べれば健康によい」という設計にはできません。セレンの過剰摂取は、脱毛や爪の変形、消化器症状などにつながることが知られています。

製品化するなら、1日あたりの摂取目安を明示する設計が現実的です。含有量は産地の土壌条件によっても変動するため、ロットごとの実測値を持っておくのが安全です。

なお、健康上の判断については専門家にご相談ください。ここでは原料の性質としての整理にとどめます。

原料としての形態と用途

形態 主な用途と留意点
殻付き(in-shell) 年末商戦向けの殻付きミックスなど。保存性は高いが、輸送重量に対する可食部が少ない
脱殻・薄皮つき もっとも一般的。サイズ別(Large / Medium / Small など)に規格化されて取引される
ブランチド(薄皮除去) 菓子・ベーカリー向け。見た目が整い、えぐみが出にくい
ブロークン・チップ グラノーラ、ミューズリー、製菓の練り込み。歩留まりの副産物としてコストが抑えられる
ブラジルナッツオイル 化粧品(ヘアケア・スキンケア)や食用。脂質が多い種子であることを活かした用途

関連記事:南米の植物由来オイル・天然ワックス一覧|化粧品・食品・雑貨向け原料を解説

日本へ輸入するときの確認事項

食品として輸入する場合、食品衛生法に基づく食品等輸入届出が必要です。そのうえで、この商材に特有の論点が3つあります。

1. アフラトキシン検査。前述のとおり最大の関門です。初回輸入時は検査命令や指導検査の対象になりうるため、船積み前の自主検査を組み込んでおくのが現実的です。サンプリング方法まで含めて合意しておきます。

2. アレルゲン表示。日本の食品表示基準では、木の実類のうち表示義務・推奨の対象品目が定められていますが、ブラジルナッツはそこに名前が挙がっていません。一方でEUでは、表示が義務づけられるアレルゲン14分類のなかにブラジルナッツが明記されています。国内向けと輸出向けで表示設計が変わる点に注意が必要です。

3. 保管と賞味期限。脂質の多いナッツなので、酸化と吸湿の両方を管理する必要があります。温度と湿度の条件、包装形態(真空・脱酸素剤・ガス置換)を、価格とあわせて検討します。

関連記事:南米から食品を輸入する手順|食品衛生法の届出・検疫・HSコード・通関の流れを解説

Misioneroの視点

ブラジルナッツは、私たちが南米の原料を見るときの考え方が、そのまま当てはまる商材です。

この一粒には、森が立っていること、ハチとアグーチがいること、雨季に森を歩く人がいること、そして拾ってから乾かすまでの数日を誰かが管理していることが、全部乗っています。安さだけを見て買うと、この構造のどこかにしわ寄せが行きます。そして品質でいえば、しわ寄せが行った先はたいてい検査結果に出ます。

逆に言えば、きちんと管理された産地から、条件を決めて継続的に買うことには、はっきりした合理性があります。検査で落ちない。供給が続く。背景を製品の言葉にできる。私たちが産地と付き合うときに見ているのは、この3つが同時に成り立つかどうかです。

南米原料の調達をお考えの企業様へ

Misionero株式会社では、南米の文化や背景を大切にしながら、現地の価値ある原料を日本へ届ける事業を行っています。ブラジルナッツをはじめとする南米原料の輸入、製品開発、OEM、販路づくりに関心のある企業様は、お気軽にご相談ください。

規格の決め方、検査項目の設計、仕入先の選定といった実務段階のご相談も承っています。

お問い合わせはこちら

よくある質問

ブラジルナッツはブラジル産ですか?

ブラジル産もありますが、輸出量ではボリビアが世界最大とされます。ペルーも主要な産地です。名称と最大産地は一致していません。

ブラジルナッツは栽培されているのですか?

供給の大半は天然林からの採集です。受粉を特定のハナバチに、種子の散布をアグーチというげっ歯類に依存しているため、森を切り開いた単一栽培では安定して実りません。

1日に何粒まで食べてよいですか?

セレンの含有量が非常に多いため、少量ずつが基本とされます。具体的な量は年齢・体調・他の食品からの摂取量によって変わるため、健康上の判断については専門家にご相談ください。

アフラトキシンとは何ですか?

カビが産生する毒素の総称です。加熱では分解されにくく、日本では食品中の総アフラトキシンが10μg/kgを超えるものの流通が認められていません。ナッツ類の輸入で問題になりやすい項目です。

ブラジルナッツはアレルギー表示が必要ですか?

日本の食品表示基準では、表示義務・推奨の対象品目にブラジルナッツの名称は挙がっていません。一方、EUでは表示義務のあるアレルゲンとして明記されています。輸出を伴う場合は仕向地の制度を確認してください。

仕入れるときに何を確認すればよいですか?

原産国、規格(サイズ・形態)、ロットごとのアフラトキシン分析証明書とサンプリング方法、水分値、包装形態、そして採集から乾燥までの工程管理です。「ブラジルナッツ」という品目名だけでは品質は特定できません。

主な出典・参考情報

関連記事