ブラジル大統領選は、第1回投票だけでは決着しませんでした。10月4日の投票で、自由党(PL)のフラビオ・ボルソナロ上院議員が47.03%、現職のルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ大統領が45.16%を獲得。両氏は10月25日の決選投票へ進みます。
30秒でわかる要点・まとめ
結論:2026年ブラジル大統領選はまだ決着しておらず、フラビオ・ボルソナロ氏とルラ氏が10月25日の決選投票で争います。日本企業は勝敗予想より、選挙後の為替・関税・財政・資源政策の正式発表を確認することが重要です。
- 第1回投票はフラビオ氏が約222万票差で先行しましたが、まだ大統領は決まっていません。
- 決選投票では、他候補へ投じられた約929万票に加え、投票しなかった人や白票・無効票を選んだ人の動向が焦点です。
- 両候補は、財政健全化の必要性では重なる一方、調整の速度、社会政策、治安、環境、対米・対中関係で違いがあります。
- 日本企業が見るべきなのは政治的なラベルより、為替、金利、関税、輸出入手続き、資源政策、環境規制が実務でどう変わるかです。

この結果は、南米最大の経済国が単純に「右へ動いた」「左に残った」と一言で片づけられるものではありません。物価と治安への不満、現職政権への評価、候補者個人への信頼、外交、地域差、議会選挙が重なった結果です。
本稿では、どちらの候補を支持すべきかではなく、確認できた数字と公表済みの政策、まだ決まっていない点を分けて整理します。
第1回投票で何が起きたのか
ブラジル高等選挙裁判所(TSE)が99.99%開票時点で公表した結果では、フラビオ氏は56,104,268票、ルラ氏は53,876,617票を獲得しました。差は2,227,651票です。有効票は125,272,513票で、白票は2,300,781票、無効票は3,674,149票でした。
| 項目 | 票数 | 割合・意味 |
|---|---|---|
| フラビオ・ボルソナロ氏 | 56,104,268票 | 有効票の47.03%。第1位で決選投票へ。 |
| ルラ氏 | 53,876,617票 | 有効票の45.16%。第2位で決選投票へ。 |
| 上位2人以外 | 約929万票 | 決選投票では、この票の行方が焦点になる。 |
| 白票 | 2,300,781票 | 投票総数の1.84%。有効票には含まれない。 |
| 無効票 | 3,674,149票 | 投票総数の2.93%。有効票には含まれない。 |
フラビオ氏は第1回投票で先行しました。ただし、得票率は過半数に届いていません。「第1回投票で1位だった」ことと、「次期大統領に決まった」ことは別です。
決選投票はいつ、どう決まるのか
決選投票は2026年10月25日です。第1回投票の上位2候補だけが争い、有効票の多い候補が当選します。白票と無効票は勝敗を決める有効票に含まれません。
ブラジルでは、読み書きのできる18歳以上70歳未満の国民に投票義務があります。一方で、AP通信は第1回投票の棄権者が3,300万人を超え、有権者の約21%だったと報じています。候補者にとっては、他候補の支持者を取り込むだけでなく、第1回投票へ行かなかった人を動かせるかも重要です。

勝敗を左右する票はどこにあるのか
単純計算では、上位2人以外へ投じられた票は約929万票です。AP通信によると、第3位から第5位の候補はいずれも政治的には右派側に位置します。ただし、候補者の支持表明と、その候補へ投票した全有権者の行動は同じではありません。
ロナウド・カイアド氏はフラビオ氏への支持を表明しました。一方、アウグスト・クリ氏とレナン・サントス氏は、どちらも支持しない意向を示したとAP通信は報じています。
加えて、約600万票の白票・無効票、3,300万人超の棄権者がいます。決選投票は候補者同士の足し算ではなく、投票率、地域別の動員、生活実感、討論や不祥事への反応で変わります。
ルラ氏とフラビオ氏を比較
| 論点 | ルラ氏 | フラビオ氏 | まだ確認が必要な点 |
|---|---|---|---|
| 基本的な立場 | 現職。労働者党(PT)。社会政策と公共投資の継続を重視。 | 上院議員。自由党(PL)。政府支出の抑制、治安強化を重視。 | 選挙後の閣僚・経済チームと議会運営。 |
| 財政 | 社会政策を維持しながら段階的に財政収支を改善する考え。 | より速い歳出調整で市場の信認と金利低下を目指す考え。 | 増税・歳出削減の具体策、実施時期、議会の同意。 |
| 外交・貿易 | 中国、BRICS、EU、メルコスールを含む多方面外交を継続する方向。 | 米国のトランプ政権との関係改善を前面に出す方向。 | 対米関税交渉、対中輸出、メルコスール政策の具体策。 |
| 資源・産業 | 重要鉱物の国内加工と付加価値化、産業政策を重視。 | 重要鉱物投資の拡大や民間活力を重視する方向。 | 鉱業権、外資条件、税、環境許認可の実際の制度。 |
| 環境 | アマゾン保全と国際協力を掲げる。 | 生産・開発側の規制負担軽減を重視する傾向。 | 農業、鉱業、先住民地域の許認可をどう運用するか。 |


物価・財政・金利が争点になる理由
選挙で語られる「経済」と、企業が実際に向き合う数字は少し違います。家計が見るのは食料やガソリンの価格、雇用、手取りです。企業が見るのは政策金利、レアル相場、税、資金調達、物流、需要です。
Reutersは、両陣営とも公的債務を安定させる財政調整を準備している一方、選挙前の段階では不人気になり得る具体策を十分に示していないと報じています。ルラ陣営は社会政策を守りながら段階的に進める立場、フラビオ陣営はより速い調整による信認回復を重視しています。
「財政を改善する」という目標が同じでも、削る支出、守る制度、増やす税収、実施速度が違えば、企業や生活者への影響は大きく変わります。
米国、中国、関税と貿易への影響
今回の決選投票では、米国との関係が外交だけでなく通商問題として扱われています。Reutersは、両候補が対米関係について大きく異なる考えを持ち、関税と重要鉱物が焦点になると報じました。
ルラ政権は、中国、米国、EU、BRICS、メルコスールを並行して扱う多方面外交を続けてきました。フラビオ氏はトランプ米政権との近さを強調しています。ただし、政権が変われば中国との貿易がただちに縮小する、あるいは米国との関税が自動的に解消する、と断定することはできません。
ブラジル開発・産業・貿易・サービス省によると、2026年9月の輸出は前年同月比12.9%増の344.2億ドル、輸入は2.4%減の266.8億ドルで、貿易黒字は77.4億ドルでした。1〜9月の対中輸出は12.0%増、対EU輸出は20.0%増です。
ブラジルの貿易は一つの国だけでは決まりません。米国との関税交渉、中国向け一次産品、EUとの制度調整、メルコスール、日本とのEPA交渉を同時に見る必要があります。

農産物・鉱物・工業品への見方
| 分野 | 選挙後に見る政策 | 日本企業への主な影響 | 今すぐ確認すること |
|---|---|---|---|
| コーヒー・大豆・食肉・砂糖・果物 | 農業融資、環境規制、輸出先の分散、対米関税。 | 価格、供給量、認証、トレーサビリティ。 | 産地、収穫期、HSコード、契約通貨、代替供給先。 |
| ニオブ・リチウム・黒鉛・レアアース | 鉱業権、国内加工、外資条件、環境許認可。 | 長期調達、精製工程、投資条件。 | 採掘権者、加工地、品位、輸出規制、物流。 |
| パルプ・木材・皮革 | 森林管理、輸出先規制、関税、原産地証明。 | 合法性確認、認証、納期、米国市場からの振替。 | FSC等の認証範囲、原料地域、輸出書類。 |
| 航空・機械・自動車部品 | 産業補助、政府調達、輸入税、対米関係。 | 部材コスト、投資計画、サプライチェーン。 | 税制変更条項、現地在庫、長期契約の価格式。 |

日本企業が10月25日前後に確認すること
選挙の直後に全ての制度が変わるわけではありません。むしろ、結果発表直後の市場反応と、2027年1月の就任までに出る人事・政策文書を分けて見る必要があります。
- 為替:レアルが急に動いた場合、見積価格と支払条件を再確認する。
- 金利:中央銀行の決定は選挙結果だけで決まらない。インフレ指標と声明を確認する。
- 関税:米国向け措置と日本向け輸入条件を混同しない。HSコード単位で見る。
- 輸出入制度:候補者の演説ではなく、公布された法令と行政運用を確認する。
- 環境・認証:森林、農地、鉱山、先住民地域に関わる商品は証明書類を点検する。
- 議会:大統領の公約が実行可能か、連立と予算の成立状況を見る。
今必要なのは、選挙を理由に取引を止めることではなく、契約、在庫、決済、許認可のどこが政策変更の影響を受けるかを先に整理しておくことです。
この記事は2026年10月12日時点の情報に基づきます。決選投票はまだ行われておらず、政策の実施内容も確定していません。選挙結果や制度変更が公表された場合は、TSE、ブラジル政府、中央銀行、税関等の一次情報をご確認ください。
よくある質問
ブラジル大統領選の決選投票はいつですか?
2026年10月25日です。第1回投票の上位2人、フラビオ・ボルソナロ氏とルラ氏が争います。
第1回投票では誰が勝ちましたか?
フラビオ氏が47.03%で首位、ルラ氏が45.16%で2位でした。ただし過半数に届かなかったため、大統領はまだ決まっていません。
決選投票では白票や無効票も計算されますか?
当選者を決める有効票には含まれません。上位2候補のうち、有効票を多く得た候補が当選します。
選挙でブラジルからの輸入が止まりますか?
選挙が行われるだけで輸出入が停止するわけではありません。為替、行政手続き、関税、港湾、契約条件への影響を品目ごとに確認する必要があります。
日本企業が最も注意すべきことは何ですか?
短期的には為替と市場反応、中期的には新政権の閣僚、財政方針、関税、資源・環境政策です。発言ではなく、正式な制度変更を確認することが重要です。
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選挙や制度変更がある時期こそ、ニュースだけで判断せず、対象商品、国、取引条件に分けて確認することが大切です。具体的な商材がまだ決まっていない段階でもご相談ください。
主な出典
- ブラジル高等選挙裁判所(TSE):第1回投票の上位2候補と得票結果
- TSE:2026年選挙結果の公開・確認方法
- AP:決選投票を前にした両候補の戦略
- AP:棄権・未決定層と決選投票
- Reuters配信:ブラジル選挙、対米関係、関税、重要鉱物
- Reuters配信:両候補の財政調整の違い
- ブラジル開発・産業・貿易・サービス省(MDIC):2026年9月貿易統計