公開日:2026年7月31日 / 南米新聞・南米ニュース・南米ビジネス / 最終確認:2026年7月31日(日本時間)
この記事のポイント
米国は対象となるチリ産品に12.5%の追加関税を課しました。ただし、銅やリチウムなど一部品目は除外されています。
米国は2026年7月24日から、チリを含む複数の国・地域から輸入する幅広い品目に、通商法301条に基づく12.5%の追加関税を適用しました。ただし、チリ産品のすべてが対象ではありません。
- 精製銅のカソード、炭酸リチウムなど、重要鉱物の一部は除外対象です。
- サーモン、ワイン、ブドウ、サクランボ、リンゴ、一部の柑橘類、木材製品などは対象に残っています。
- 今回の措置は、特定のチリ産品から強制労働が確認されたという認定ではありません。
- 追加関税が直接かかるのは米国への輸入です。チリから日本へ輸入する商品に、この12.5%がそのまま加算されるわけではありません。
- 日本企業が見るべきなのは、米国向け商流の変化が価格、供給量、納期、販売先の組み替えに波及するかどうかです。
チリ産のサーモン、ワイン、ブドウ、サクランボ。日本でも見かけるこれらの商品は、米国でも大きな市場を持っています。その流れに、2026年7月24日、新しい12.5%の追加関税が加わりました。
見出しだけを読むと「チリの輸出品がすべて一律に値上がりする」と受け取りたくなります。しかし実際には、対象外となった商品があり、同じ果物でも扱いが分かれています。さらに、日本向けの輸入に米国の関税が直接かかるわけでもありません。
大切なのは、何に関税がかかり、何が除外され、商流のどこに負担が生じるのかを分けて見ることです。この記事では、米国通商代表部(USTR)とチリ政府の発表、チリの公的な貿易資料、現地報道を基に整理します。

米国とチリの間で何が起きたのか
USTRは2026年7月23日、強制労働によって生産された商品の輸入を禁止し、実効的に取り締まう制度が不十分だと判断した60の国・地域に対し、通商法301条に基づく追加関税を発表しました。
米国側の説明では、輸入禁止制度を設けた国や、制度整備を約束した一部の国には10%、それ以外の調査対象国には原則12.5%を適用します。チリは後者に入りました。従来の暫定的な10%に代わり、米国東部時間の7月24日午前0時1分から12.5%が適用されています。
| 項目 | 確認された内容 | 読み方 |
|---|---|---|
| 税率 | 対象となるチリ産品に12.5%の追加関税 | 通常税率とは別枠の通商法301条に基づく追加分です。 |
| 発効 | 2026年7月24日午前0時1分(米国東部時間) | 積載・入港・輸入申告の時点により扱いを確認する必要があります。 |
| 法的根拠 | 米国1974年通商法301条 | チリとの自由貿易協定そのものを廃止した措置ではありません。 |
| 対象 | 幅広い輸入品。ただし品目別の除外あり | 国名だけでは判定できず、米国の関税分類番号で確認します。 |
チリと米国の自由貿易協定では、物品の関税撤廃スケジュールが2015年に完了しています。今回の追加関税は、その協定上の通常関税を元に戻すものではなく、米国国内法による新たな上乗せ措置です。
なぜ「強制労働」が関税の理由になったのか
米国は、強制労働で生産された商品の輸入を禁じる制度を、貿易相手国も導入し、実効的に執行すべきだと主張しています。USTRは2026年3月に60の国・地域を対象とする調査を始め、政府間協議、公聴会、意見募集を経て今回の措置を決めました。
これに対しチリ政府は、国内に労働法制と強制労働防止の枠組みがあり、国際条約も履行しているとして、米国側の評価に異議を示しています。
ここで混同してはいけない点があります。今回の米国の決定は、「チリのサーモンや果物が強制労働で作られた」と認定したものではありません。チリ政府の声明も、米国の決定は特定のチリ産品に強制労働があると指摘したものではなく、輸入禁止制度の評価をめぐる相違だと説明しています。
米国側とチリ側では、制度をどう評価するかについて見解が異なります。本記事では、どちらかの政治的主張を結論にせず、発表主体を明示して扱います。
何が対象で、何が除外されたのか
米国は、国内供給が不足する可能性のある原料、経済全体への混乱が大きい商品、米国内で十分に生産できない商品、すでに別の通商措置の対象となる商品などを除外しました。チリ政府は7月27日、対米輸出の40%が12.5%の対象となり、輸出額の半分を超える部分が除外されたと説明しています。
| 分野 | 除外が報じられた主な品目 | 12.5%の対象と報じられた主な品目 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 鉱物 | 精製銅カソード、炭酸リチウム、水酸化リチウム、銀、ヨウ素、金、硝酸カリウム、レニウムなど | 除外表に記載されない鉱物・加工品 | 「銅」「リチウム」という名称だけで一括判断しません。 |
| 果物・農産物 | キウイ、アボカド、オレンジ、種子など | ブドウ、サクランボ、リンゴ、レモン、モモ、ブルーベリー、冷凍果実、オリーブ油など | 生鮮・冷凍・加工状態で分類が変わります。 |
| ワイン・食品 | 品目別除外表に該当するもの | ボトルワイン、乳製品、練乳など | 容量、包装、成分によって関税分類を確認します。 |
| 水産物 | 除外表に該当する一部品目 | サーモン各種、魚粉、ムール貝の缶詰など | 魚種、部位、冷蔵・冷凍、加工方法で分類が分かれます。 |
| 林産品 | 除外表に該当する一部品目 | 木製パネルなど | 樹種、加工度、用途別の確認が必要です。 |
※上表は2026年7月30日時点のUSTR発表とチリ側報道を基にした代表例です。実際の輸入では、商品名ではなく米国のHTS分類番号と最新の除外表で判定してください。
銅・リチウムへの影響:主力品が除外された意味
チリの対米輸出では、鉱業が大きな比重を占めます。チリ政府の貿易報告によると、2025年の対米輸出は177億4,100万米ドルで、そのうち銅は86億8,400万米ドルでした。銅だけで対米輸出の約半分を占めます。
精製銅カソードや炭酸リチウムなどが除外されたため、12.5%がチリの対米輸出全体へ一様にかかる構図にはなりません。電力網、電子機器、電気自動車、蓄電池などに使われる重要原料を除外したことからも、米国側が国内供給への影響を意識して線引きしたことが読み取れます。
ただし、「チリ産の銅とリチウムはすべて無関係」とは言えません。精製度、形状、用途、加工段階が違えば関税分類も変わります。加工品や関連部材を扱う企業は、商品ごとの確認が必要です。

果物・ワインへの影響:価格だけでなく販売時期が重要
果物とワインは、銅ほど一品目当たりの輸出額が大きくなくても、産地の雇用、選果、包装、冷蔵倉庫、港湾輸送まで裾野が広い分野です。2025年、チリから米国への果物輸出は14億3,600万米ドル、ボトルワインは1億1,400万米ドルでした。
果物で特に難しいのは、収穫後に長く待てないことです。関税分を価格に転嫁できなければ、輸出業者や生産者の利益が縮みます。米国の輸入業者や小売が一部を負担すれば、店頭価格へ影響する可能性もあります。販売先を他国へ切り替えれば、別市場で供給が増え、相場が動く場合もあります。
とはいえ、12.5%の追加関税から、そのまま12.5%の店頭値上げが起きるとは限りません。契約価格、為替、物流費、小売の値付け、競合産地、収穫量によって負担の分かれ方が変わるからです。

サーモン・水産物への影響:米国市場の大きさが焦点
米国はチリ産水産物の最大の輸出先です。チリ政府資料によると、2025年のチリから米国へのサーモン輸出は25億3,400万米ドルでした。今回、サーモンは複数の形態で追加関税の対象に残ったと報じられています。
水産物では、冷蔵・冷凍、フィレ、切り身、加工品といった形態で物流条件と関税分類が変わります。短期間で別市場へ振り替える場合も、冷凍設備、認証、表示、買い手の規格をそろえなければなりません。
サーモンへの影響は「米国向けが減るか」だけではなく、チリ側がどの市場へ、どの規格の商品を振り向けるかまで見て初めて分かります。日本にとっては、供給機会が増える可能性と、世界市場の価格調整に巻き込まれる可能性の両方があります。現時点では、いずれも今後の動きであり、確定した結果ではありません。

12.5%の関税は、最終的に誰が負担するのか
米国税関へ関税を納めるのは、原則として米国側の輸入者です。しかし、経済的な負担がその会社だけに残るとは限りません。商談の中で、チリ側への値下げ要求、小売価格への転嫁、発注数量の削減などに分かれていきます。
| 負担の現れ方 | 起こり得る対応 | 確認する数字 |
|---|---|---|
| 米国輸入者が吸収 | 利益率を下げ、販売量を維持する。 | 粗利、在庫回転、競合価格 |
| チリ側へ値下げ要請 | 輸出価格や契約条件を再交渉する。 | FOB価格、生産原価、最低ロット |
| 消費者価格へ転嫁 | 卸売・小売価格を引き上げる。 | 店頭価格、需要、代替商品の価格 |
| 発注・販売先を変更 | 米国の買い手が他国産へ、チリ側が他市場へ切り替える。 | 輸出量、仕向地、スポット価格 |
実際には、これらが一つだけ起きるのではなく、複数の負担が組み合わさることが多いでしょう。だからこそ、関税率だけを見て価格を予測するのは危険です。
日本企業にどのような関係があるのか
今回の12.5%は米国が輸入時に課す関税であり、チリから日本へ直接輸入する商品には適用されません。日本の輸入者が直ちに12.5%を追加で払う制度ではありません。
それでも無関係ではないのは、チリの輸出企業が一つの市場だけで商売をしているわけではないからです。米国向けの採算が悪化すれば、販売先、数量、規格、価格交渉が動く可能性があります。
| 日本企業への接点 | 考えられる変化 | まだ断定できないこと |
|---|---|---|
| 調達機会 | 米国以外の販売先を探す供給者との商談が増える可能性 | 日本向け価格が必ず下がるとは限りません。 |
| 価格 | 世界の仕向地変更に伴う相場調整 | 関税率と同じ幅で価格が動くわけではありません。 |
| 商品規格 | 米国向け仕様の商品を別市場へ提案する動き | 日本の食品規格・表示・検疫にそのまま適合するとは限りません。 |
| 供給の安定性 | 契約数量や生産計画の組み替え | 短期的な余剰が長期供給につながるとは限りません。 |
チリは銅やリチウムだけの国ではありません。2025年には食品輸出が過去最高を記録し、サーモン、果物、ワイン、水産加工品など、多様な商品が地域の雇用を支えました。今回の関税を読む時も、数字だけでなく、その後ろにある産地、加工、物流まで見る必要があります。
チリ商材を扱う企業が今確認すべきこと
- 販売先:今回の貨物が米国向けなのか、日本向けなのか、第三国経由なのか。
- 関税分類:商品名ではなく、米国HTS番号または日本のHS分類で確認できているか。
- 加工状態:生鮮、冷凍、濃縮、粉末、缶詰、ボトルなど、どの形態で取引するか。
- 契約条件:関税、運賃、保険、価格変更を誰が負担する契約になっているか。
- 供給者の米国依存度:生産量のうち米国向けがどの程度を占めるか。
- 日本側の輸入条件:食品衛生法、残留農薬、植物・動物検疫、表示、添加物、温度帯を確認したか。
- 価格の有効期限:為替、海上運賃、市場変更を踏まえ、見積条件がいつまで有効か。
- 一次情報:USTR、チリSUBREI、税関、業界団体の更新を追っているか。
企業に必要なのは、ニュースを見て急いで買うことでも、怖がって取引を止めることでもありません。自社の商品分類、契約、供給者の販売構成を確認し、影響の有無を具体的に切り分けることです。
今後、何を見れば状況の変化が分かるのか
チリ政府は、米国との制度的な対話を続け、サーモン、果物、ワインなど主要輸出品の追加除外を求める方針です。7月27日には外務・通商当局が輸出業界団体と会合を開き、対応を協議しました。チリ政府によると、USTRのジェフ・ゲットマン次席代表が8月末にチリを訪問し、協議を続ける予定です。
- 除外品目が追加されるか。 特にサーモン、果物、ワインの扱いが焦点です。
- チリが輸入禁止制度を変更するか。 米国側の評価や税率見直しにつながる可能性があります。
- 米国向け輸出量が実際に減るか。 金額だけでなく数量と単価を分けて見ます。
- 販売先が変わるか。 日本、中国、欧州、ブラジルなどへの仕向地変更を確認します。
- 企業間の価格交渉がどう決着するか。 関税の負担先は契約ごとに異なります。
発表直後の段階では、将来の輸出減少額や日本市場への影響を確定できません。輸出統計に変化が表れるまでには時間差もあります。南米新聞では、制度の更新と実際の貿易データを分けて追います。
チリ・南米商材の輸入や調達を検討している企業様へ
サーモン、果物、ワイン、食品原料、天然素材など、チリ・南米商材の調達をご検討ですか。
Misioneroでは、南米現地との接点を活かし、商材候補の調査、供給者の確認、規格・ロット・サンプル・物流条件の整理、日本での輸入可否を検討するための初期確認をお手伝いしています。
今回のような通商ニュースについても、「自社が検討している商品に直接関係するのか」「販売先の変更で調達機会が生まれるのか」という段階からご相談いただけます。ニュースを商談へ結びつける前に、事実と条件を一緒に確認します。
よくある質問
米国はチリ産品すべてに12.5%の関税をかけたのですか?
いいえ。幅広い品目が対象ですが、精製銅カソード、炭酸リチウム、キウイ、アボカドなど、品目別の除外があります。実務では商品名だけでなく、米国の関税分類番号と最新の除外表で確認します。
チリ産品から強制労働が見つかったのですか?
今回の決定は、特定のチリ産品に強制労働があると認定したものではありません。米国は、強制労働で作られた商品の輸入を禁止し、実効的に取り締まる制度について評価しました。チリ政府は米国側の制度評価に異議を示しています。
銅とリチウムはすべて関税の対象外ですか?
すべてとは言えません。精製銅カソード、炭酸リチウム、水酸化リチウムなど、代表的な品目は除外されていますが、加工状態や分類が異なる商品は個別確認が必要です。
サーモン、ワイン、果物には12.5%がかかりますか?
サーモンの複数形態、ボトルワイン、ブドウ、サクランボ、リンゴ、レモンなどは対象に残ったと報じられています。一方、キウイ、アボカド、オレンジなどは除外対象です。同じ分野でも品目と加工状態で扱いが異なります。
チリから日本へ輸入する場合も12.5%を払いますか?
いいえ。今回の追加関税は米国への輸入に対する措置です。チリから日本へ直接輸入する商品に12.5%が自動的に加算されるわけではありません。ただし、チリ側の販売先変更により、国際価格や供給条件が間接的に動く可能性はあります。
日本企業に調達の機会はありますか?
チリの供給者が米国以外の販売先を開拓する場合、商談機会が生まれる可能性はあります。ただし、日本の規格、検疫、表示、ロット、物流へ適合するかは別の確認が必要です。関税ニュースだけで価格低下や供給増を断定することはできません。
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主な出典・参考情報
- 米国通商代表部(USTR):強制労働をめぐる通商法301条調査の最終措置(2026年7月23日)
- USTR:60の国・地域への措置に関するファクトシート(2026年7月)
- チリ国際経済関係次官府(SUBREI):12.5%追加関税に関する政府声明(2026年7月23日)
- SUBREI:チリ政府と輸出業界団体の対応協議(2026年7月27日)
- SUBREI:チリ対外貿易見通し・2025年の対米貿易統計(2026年4月)
- SUBREI:チリ・米国自由貿易協定
- Emol:対象品目と除外品目の整理(2026年7月23日)
本記事は2026年7月31日(日本時間)までに確認できた米国・チリ両政府の公表資料、チリの公的貿易統計、現地報道を基に作成しています。対象品目、除外、税率、運用は変更される可能性があります。個別取引では、最新の法令、関税分類、税関・通関業者の確認を優先してください。将来の価格や供給への影響は予測として断定せず、確認済みの制度と想定される波及経路を分けて記載しています。