公開日:2026年8月2日 / 南米新聞・南米ニュース・国別情報・南米ビジネス / 最終確認:2026年8月2日(日本時間)
この記事の結論
ケイコ・フジモリ氏は2026年7月28日、ペルー大統領に就任しました。任期は2031年までです。選挙では5万人未満の僅差で勝利し、ペルーで国民の投票によって選ばれた初の女性大統領となりました。
- 新政権が最優先課題に掲げるのは、犯罪・恐喝への対策、政治の安定、経済成長です。
- 就任演説では、最低賃金の15%引き上げ、農村部の栄養対策、エルニーニョへの備えも発表しました。
- 鉱業は輸出と投資を支える一方、違法採掘、地域社会との合意、環境管理も大きな課題です。
- 2026年第1四半期の実質GDPは前年同期比3.5%増で、経済は政権交代時点で一定の成長を維持しています。
- 日本とペルーには150年以上の外交関係があり、鉱物、水産物、農産物を中心に貿易関係があります。
- 就任直後のため、公約がどこまで制度や予算として実行されるかは、まだ評価できません。
ペルーで、また一つ大きな政治の節目が訪れました。ケイコ・フジモリ氏が2026年7月28日、大統領として宣誓し、ケイコ・フジモリ政権が5年間の任期をスタートさせました。
ニュースでは「南米の右傾化」「フジモリ家の復権」といった言葉が目立ちます。しかし、日本企業がペルーとの取引を考えるうえで必要なのは、政治的な評価だけではありません。治安対策が物流や事業活動にどう関わるのか。鉱業投資の促進と地域・環境の課題をどう両立するのか。経済政策の継続性は保たれるのか。見るべき点は具体的です。
この記事では、新政権への賛否を決めるのではなく、確認できた事実、公約、まだ結果が出ていない事項を分けて整理します。

ペルーで何が起きたのか
ペルー国家選挙審議会(JNE)は2026年7月3日、ケイコ・ソフィア・フジモリ・ヒグチ氏を次期大統領として正式に宣言しました。第1副大統領はルイス・ガラレタ氏、第2副大統領はミゲル・トレス氏です。任期は2026年から2031年までとなります。
6月の決選投票では、フジモリ氏が対立候補のロベルト・サンチェス氏を5万票未満の差で破りました。結果は正式な選挙手続きを経て確定していますが、差が小さかったことは、国内の意見が大きく分かれていることも示しています。
| 項目 | 確認された事実 | 読み取る際の注意 |
|---|---|---|
| 就任日 | 2026年7月28日 | ペルー独立記念日に新大統領が就任する慣例があります。 |
| 任期 | 2026年から2031年 | 就任演説では5年間の任期を守る意向を示しました。 |
| 選挙結果 | 決選投票を5万票未満の差で勝利 | 法的な正統性と、社会的な分断の大きさは別々に見る必要があります。 |
| 歴史的な位置づけ | 国民投票で選ばれた初の女性大統領 | 「女性として初めて大統領職を担う」という意味ではありません。ディナ・ボルアルテ氏は副大統領から昇格して大統領を務めました。 |
「初の女性大統領」という表現には注意が必要です。正確には、フジモリ氏はペルーで初めて国民の投票によって大統領に選ばれた女性です。
ケイコ・フジモリ氏とは
ケイコ・フジモリ氏は1975年生まれ。政党「人民勢力(Fuerza Popular)」を率い、今回が4回目の大統領選への挑戦でした。父は1990年から2000年までペルー大統領を務めたアルベルト・フジモリ氏です。
父の政権については、インフレ抑制や武装組織への対処を評価する人がいる一方、議会の停止、人権侵害、汚職を強く批判する人もいます。そのため、ケイコ氏の就任は、単なる政権交代ではなく、ペルー社会に残る「フジモリ政治をどう評価するか」という議論とも結びついています。
ケイコ氏本人への評価も分かれています。支持者は治安回復と政策実行力を期待し、反対する側は権力集中や人権面への懸念を示しています。就任式当日には議会内外で抗議も行われました。
中立に見るためには、父の政権の功罪をそのまま娘の政権の結果とみなさず、新政権が実際に行う法改正、予算配分、治安作戦、議会運営を確認する必要があります。
なぜ「政治の安定」が問われているのか
ペルーはこの10年間、大統領の辞任、罷免、議会との衝突を繰り返してきました。AP通信は、フジモリ氏をこの10年で9人目の大統領と報じています。国民投票で直接選ばれた大統領だけでなく、副大統領からの昇格や議会による後継大統領も含む数字です。
今回、人民勢力と主要な協力政党は上院で一定の議席を確保し、人民勢力系のミゲル・トレス氏が上院議長に選ばれました。新政権にとっては、過去の政権より議会との調整を進めやすい可能性があります。
ただし、議会での基盤が強いことと、社会全体の合意が得られていることは同じではありません。僅差の選挙、就任時の抗議、地方と首都の格差などを考えると、政治の安定は議席数だけで決まりません。
| 安定につながり得る要素 | 不安定化につながり得る要素 | 確認する指標 |
|---|---|---|
| 議会内に一定の協力基盤がある | 大統領選が極めて僅差だった | 法案可決、閣僚承認、政党間協議 |
| 経済政策の継続性を重視する人事 | フジモリ政治をめぐる根強い対立 | 財政運営、中央銀行との関係、抗議活動 |
| 治安対策への強い社会的要請 | 強硬策に伴う人権・司法手続きへの懸念 | 犯罪統計、逮捕後の司法手続き、監督制度 |

治安対策で何が変わるのか
今回の選挙で、治安は最大級の争点でした。ペルーでは恐喝、殺し屋を使った犯罪、麻薬取引、違法鉱業と犯罪組織の結びつきが問題となっています。ペルー国家統計情報庁(INEI)の集計では、2025年上半期の恐喝の届け出は1万4,206件で、前年同期より増加しました。リマ首都圏だけで5,783件が報告されています。
フジモリ氏は選挙戦で、犯罪への「強い対応」を掲げ、エルサルバドルの治安政策を参考にした大規模刑務所の建設などを提案しました。就任演説では、警察に加えて軍も犯罪対策に参加させる方針を示し、恐喝、殺し屋、麻薬取引、違法鉱業を支える国内外の組織を取り締まると述べています。
ここで確認できるのは、現時点では方針と公約です。犯罪が減った、物流が安全になった、投資環境が改善したという結果は、就任直後にはまだ判断できません。
企業にとって治安は、社員の安全だけの問題ではありません。道路封鎖、貨物盗難、港までの輸送、鉱山・農園の操業、現地視察、保険料にも関係します。一方、強硬な治安政策には、適正な司法手続き、人権、軍と警察の役割分担という確認も必要です。
ペルー経済の現在地
新政権は、経済が完全に停滞した状態から出発するわけではありません。ペルー国家統計情報庁の資料をまとめたジェトロによると、2026年第1四半期の実質GDP成長率は前年同期比3.5%でした。農業、漁業、製造業、建設、商業、サービスはいずれもプラス成長です。
世界銀行は、ペルーの成長率が2005年から2014年の平均6.2%から、2015年から2024年には平均2.4%へ低下したと整理しています。つまり、足元で成長していても、中長期的には生産性、雇用、公共サービス、地域格差への対応が残っています。
| 指標 | 直近の確認値 | 意味 |
|---|---|---|
| 実質GDP | 2026年第1四半期:前年同期比3.5%増 | 政権交代時点では一定の成長を維持しています。 |
| 輸出額 | 2026年1~5月:450億米ドル超、前年同期比37%増 | 鉱物価格と輸出増が全体を強く押し上げました。 |
| 輸出企業数 | 2026年1~5月:7,325社 | 65%は零細・中小企業とされています。 |
| 主要輸出市場 | 中国、米国、欧州連合 | アジアと北米の景気・通商政策の影響を受けます。 |
新政権が経済成長を「新たに生み出した」と評価するには早すぎます。7月28日に始まった政権の成果は、今後の予算、投資、雇用、物価、所得の推移で確認する必要があります。
最低賃金・社会政策・エルニーニョ対策の発表
フジモリ氏は就任演説で、最低賃金を月額1,130ソルから1,300ソルへ引き上げる方針を発表しました。引き上げ幅は約15%です。また、農村部の栄養不良を減らすため社会サービスを再編する方針と、沿岸部の洪水につながることがあるエルニーニョへの備えも示しました。
| 発表項目 | 就任演説で示された内容 | 今後確認すること |
|---|---|---|
| 最低賃金 | 月額1,130ソルから1,300ソルへ引き上げる方針 | 正式な法令、実施日、対象範囲、企業の人件費への影響 |
| 栄養対策 | 農村部の栄養不良に対応するため、社会サービスを再編 | 予算、対象地域、既存制度との役割分担 |
| エルニーニョ | 洪水などに備える防災を優先 | 河川・排水対策、物流・農業への支援、実施予算 |
これらは就任演説で示された方針です。最低賃金の正式な発効日や社会政策の予算を含め、実施内容は今後の法令・政府発表で確認する必要があります。
鉱業政策と資源ビジネス
ペルー経済を語るうえで、鉱業は外せません。2026年1~5月の輸出では、銅が155億1,500万米ドル、金が117億7,600万米ドルに達しました。鉛、銀精鉱、亜鉛も増加しています。
世界銀行は2026年3月、ペルーの鉱業について、地質情報の近代化、許認可の効率化、環境・社会管理の強化を支援するプロジェクトを承認しました。投資の呼び込みだけでなく、透明性、地域の雇用、環境管理を同時に扱う設計です。
新政権には、投資案件を動かし、インフラや雇用につなげる期待があります。一方、正規の鉱業と違法鉱業を混同しないこと、先住民・地域住民との協議、水資源、環境影響、利益の地域還元を丁寧に扱う必要があります。
ペルーの鉱業政策を見るポイントは「投資を増やすか、規制を強めるか」という二択ではありません。予測可能な許認可、違法採掘の取り締まり、地域との合意、環境管理を同時に機能させられるかです。

日本とペルーの関係
日本とペルーの外交関係は1873年に始まり、150年以上続いています。日本政府は両国を、価値と原則を共有する戦略的パートナーと位置づけています。2026年の大統領就任式には、日本政府が堀井巌外務副大臣を特派大使として派遣しました。
2025年のペルーから日本への輸出は32億3,600万米ドル、日本からペルーへの輸出は11億1,600万米ドルでした。ペルーから日本へは鉱物資源に加え、イカ・タコ類、アスパラガス、アボカド、魚油、コーヒー、サチャインチ、トウモロコシなど、多様な品目が取引されています。
日本とペルーの間には経済連携協定があり、ペルーはCPTPPにも参加しています。ただし、協定があるからすべての商品を無条件で輸入できるわけではありません。原産地規則、関税分類、食品衛生法、植物・動物検疫、表示、残留農薬や添加物など、商品ごとの確認が必要です。

新政権は日本企業にどう影響するのか
大統領が交代しただけで、日本とペルーの貿易条件が直ちに変わった事実はありません。経済連携協定やCPTPP、既存の輸入制度が就任日に失効したわけではありません。
企業が見るべきなのは、今後の政策が実務条件をどう変えるかです。治安、港湾・道路、鉱業許認可、税制、通関、食品・農産物の輸出促進策、行政手続きの予測可能性は、時間をかけて取引へ影響します。
| 分野 | 期待される方向 | 確認すべきリスク | 企業が見る資料 |
|---|---|---|---|
| 鉱業・資源 | 投資案件と許認可の促進 | 地域対立、違法鉱業、環境・水問題 | 鉱業省、環境当局、地域政府の公表資料 |
| 食品・農産物 | 輸出促進と市場の多角化 | 天候、検疫、規格、港湾物流 | MINCETUR、PROMPERÚ、SENASA |
| 物流・現地拠点 | 治安改善とインフラ整備 | 恐喝、貨物盗難、道路封鎖、保険料 | 犯罪統計、港湾情報、物流会社の運行情報 |
| 制度・投資 | 政策継続と行政手続きの迅速化 | 法改正、税制変更、政治対立 | 官報、経済財政省、ジェトロ、在ペルー日本大使館 |
政治ニュースを見て「すぐに投資すべき」「危険だから撤退すべき」と決めるのではなく、自社が扱う商品、地域、契約、物流経路に関係する政策だけを切り分けることが重要です。
就任後100日で確認したい7項目
- 治安政策が法令と予算にどう落とし込まれるか。
- 軍と警察の役割、司法手続き、人権監督が明確になるか。
- 鉱業許認可の迅速化と、環境・地域協議を両立できるか。
- 違法鉱業と正規の鉱業を分けた対策が進むか。
- 財政規律、物価、中央銀行の独立性が保たれるか。
- 港湾、道路、地方インフラの計画が実行段階へ進むか。
- 日本を含むアジアとの貿易・投資関係に具体的な進展があるか。
新政権を評価するうえで大切なのは、演説の強さではなく、制度、予算、実行結果の三つを追うことです。南米新聞では、発表された政策と実際の統計を分けて続報を確認します。
ペルー・南米商材の輸入や調達を検討している企業様へ
ペルーからの食品原料、農産物、水産物、天然素材、加工品の輸入を検討されていますか。
Misionero株式会社では、ペルーを含む南米商材について、商品候補の調査、現地供給者の確認、サンプル、規格、最低ロット、価格、物流、日本での輸入条件の整理をお手伝いしています。
「探している原料がペルーにあるか分からない」「すでに候補はあるが、輸入までの進め方が分からない」という段階でもご相談いただけます。南米の価値を一方的に安く買うのではなく、現地と日本の双方に続く取引を一緒に考えます。
よくある質問
ケイコ・フジモリ氏はいつペルー大統領に就任しましたか?
2026年7月28日に就任しました。任期は2031年までの5年間です。
ケイコ・フジモリ氏はペルー初の女性大統領ですか?
国民の投票によって選ばれた女性大統領としては初めてです。ディナ・ボルアルテ氏は2022年に副大統領から大統領へ昇格しており、「女性として初めて大統領職を担った人物」と「初めて選挙で選ばれた女性大統領」は分けて表現する必要があります。
新政権の最優先課題は何ですか?
就任演説と選挙公約では、犯罪と恐喝への対策、政治の安定、経済成長、インフラ整備などが中心です。ただし、具体的な成果は今後の法令、予算、統計で確認する必要があります。
ペルーの主な輸出品は何ですか?
銅、金、鉛、亜鉛などの鉱物が大きな割合を占めます。果物、コーヒー、キヌア、水産物、天然色素なども輸出されています。
新政権の発足で日本との貿易制度は変わりましたか?
就任によって経済連携協定やCPTPPが失効した事実はありません。個別商品では、従来どおり関税分類、原産地規則、検疫、食品衛生、表示などの条件を確認します。
日本企業は今すぐ投資や輸入の判断を変えるべきですか?
政権発足だけを理由に判断を急ぐ必要はありません。自社の商品、産地、物流経路、現地取引先に関係する政策を特定し、制度変更と実際の運用を確認してから判断するのが現実的です。
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主な出典・参考情報
- ペルー国家選挙審議会(JNE):ケイコ・フジモリ氏の大統領当選宣言(2026年7月3日)
- AP通信:ケイコ・フジモリ氏の大統領就任と選挙・治安政策(2026年7月28日)
- ペルー官報 El Peruano:大統領就任(2026年7月28日)
- ペルー国家統計情報庁(INEI):犯罪・治安・暴力統計(2025年上半期)
- ペルー通商観光省:2026年1~5月の輸出統計(2026年7月)
- 世界銀行:ペルーの持続可能な鉱業と競争力強化プロジェクト(2026年3月)
- ジェトロ:ペルーの貿易投資年報(2026年版)
- 日本国外務省:ペルー大統領就任式への特派大使派遣(2026年7月25日)
- ペルー通商観光省:日本・ペルー経済連携協定と主要貿易品目
本記事は2026年8月2日(日本時間)までに確認できたペルー政府・選挙当局、日本国外務省、国際機関、ジェトロ、報道機関の資料を基に作成しました。新政権は発足直後であり、政策の詳細や運用は今後変更される可能性があります。公約・政府発表と、すでに確認された成果を区別して記載しています。個別の投資・輸入判断では、最新の法令、統計、契約条件、専門家の確認を優先してください。