公開日:2026年8月21日 / 南米新聞・輸入と貿易・南米ビジネス / 最終確認:2026年8月3日(日本時間)
この記事の結論
南米から食品を輸入するとき、手続きは大きく「事前確認 → 分類の特定 → 食品等輸入届出 → 通関 → 国内表示」の5段階で進みます。順番を間違えると、船が着いてから止まります。
- 最初にやるべきは「そもそも日本に入れられる品目か」の確認です。食品衛生法だけでなく、植物防疫法や家畜伝染病予防法が関わることがあります。
- HSコードの特定は関税率と手続きを決める起点です。判断に迷う場合、税関の事前教示制度で書面の回答を得られます。
- 飲食用の輸入には食品等輸入届出が必要です。初回は書類が多く、検査に日数がかかることを前提に計画します。
- 南米との関係では、チリ・ペルーとは経済連携協定(EPA)が発効済みである一方、ブラジル・アルゼンチンなどメルコスール諸国とは締結されていません。この差が関税に直結します。
- 販売するには食品表示法に基づく日本語表示が必要です。輸入してから考え始めると、ラベル作成で時間を失います。
「南米のこの原料を扱ってみたい」という話が社内で出たとき、次に来るのは決まって同じ質問です。「それ、どうやって日本に持ってくるんですか?」
輸入の手続きは、慣れてしまえば流れ作業です。ただ、最初の一回は情報が散らばっていて、どこから手をつければいいのか分かりにくい。しかも順番を間違えると、後の工程で必ず戻されます。
この記事では、南米から食品を輸入する場合の手続きを、実務の順番どおりに整理します。「何を検討すべきか」という考え方については、南米農産物を日本へ|輸入を検討するときの基礎をあわせてご覧ください。
全体の流れ
まず全体像を押さえます。食品を輸入して国内で販売するまでには、次の段階があります。
| 段階 | やること | 主な窓口 |
|---|---|---|
| STEP1 事前確認 |
輸入できる品目か。規制・検疫の有無を確認 | 検疫所、植物防疫所、動物検疫所 |
| STEP2 分類 |
HSコードの特定、関税率・EPAの確認 | 税関(事前教示制度) |
| STEP3 衛生手続き |
食品等輸入届出、必要に応じた検査 | 厚生労働省 検疫所 |
| STEP4 通関 |
輸入申告、関税・消費税の納付、輸入許可 | 税関(通常は通関業者が代行) |
| STEP5 表示 |
日本語表示ラベルの作成・貼付 | 消費者庁(食品表示法) |
重要なのは、STEP1とSTEP2は貨物を動かす前に終わらせておくということです。ここを飛ばして現物を送ってしまうと、日本に着いてから「入れられない」と判明する事態が起こります。
STEP1|そもそも輸入できるかを確認する
最初の関門は、その品目が日本に持ち込めるものかどうかです。関わる法律は一つではありません。
食品衛生法
飲食に供されるもの全般が対象です。確認するのは主に次の点です。
- 添加物:日本で使用が認められていない添加物が使われていないか。海外では一般的でも日本では不可、という例は珍しくありません。
- 残留農薬:日本はポジティブリスト制を採っており、基準が設定されていない農薬には一律基準が適用されます。産地での防除実態の確認が必要です。
- 器具・容器包装:食品に触れる包材も規格の対象です。
- 放射性物質・カビ毒など:品目によって注意すべき項目が異なります。
植物防疫法
生鮮の果実・野菜、種子、乾燥した植物体などは、植物防疫所での輸入検査が必要になります。国と品目の組み合わせによっては輸入自体が禁止されている場合もあります。加工度が高ければ対象外となることもありますが、判断は自己流で決めず、植物防疫所へ照会するのが確実です。
家畜伝染病予防法
肉類・乳製品・卵などの畜産物は、動物検疫所の管轄です。国によって輸入可否が分かれ、輸出国政府発行の衛生証明書が求められます。
その他
ワシントン条約(CITES)に該当する動植物由来の原料、外国為替及び外国貿易法に基づく規制品目なども確認対象です。天然素材を扱う場合、この点は見落とされがちです。
実務のコツ:この段階では、現地サプライヤーから「製品規格書」「原材料表」「製造工程図」「分析成績書」を先に取り寄せておくと、以降の確認がすべて速くなります。英語かスペイン語・ポルトガル語で届くので、翻訳の時間も見込んでおきます。
STEP2|HSコードを特定し、関税を確認する
HSコードは、貿易される商品を分類する国際的な番号です。関税率、統計、必要な手続き。すべてがこの番号を起点に決まります。
食品関係でよく使われる項の例を挙げます。
| 0901 | コーヒー |
|---|---|
| 0902 | 茶(緑茶・紅茶) |
| 0903 | マテ |
| 1801 | カカオ豆 |
| 0306 / 0307 | 甲殻類(エビ等)/軟体動物(イカ・貝等) |
| 0811 | 冷凍果実 |
ここで注意したいのは、同じ原料でも加工度によって分類が変わることです。果実そのものと、冷凍ピューレと、粉末と、抽出エキスでは、それぞれ別の項に入ります。関税率も変わります。
判断に迷う場合は、税関の事前教示制度を使えます。商品の内容を示して照会すれば、分類や関税率について書面で回答が得られる仕組みです。回答には一定の期間が必要ですが、後から分類が覆るリスクを避けられます。金額の大きい取引や、継続的な取引を予定している場合は、使う価値があります。
南米とのEPA — 国によって条件が違う
南米から輸入するとき、相手国によって関税の条件が大きく変わります。ここは見落とされやすいポイントです。
| 国 | 日本とのEPA | 実務上の意味 |
|---|---|---|
| チリ | 締結済み(2007年発効) | 原産地規則を満たせば協定税率を適用できる。原産地証明の準備が必要。 |
| ペルー | 締結済み(2012年発効) | 同上。品目ごとに段階的な引下げスケジュールがある。 |
| ブラジル・アルゼンチン パラグアイ・ウルグアイ |
未締結 | メルコスール加盟国。協定税率は使えず、原則としてWTO協定税率等が適用される。 |
| コロンビア・エクアドル ボリビア等 |
未締結 | 品目により特恵関税の対象となる場合があるため、個別確認が必要。 |
同じ品目でも、チリ産とブラジル産では最終的なコストが変わる可能性がある、ということです。調達先を比較検討する段階で、関税条件まで含めて試算しておく。これができているかどうかで、後の採算計算の精度が変わります。
EPAの協定税率を使うには、原産地規則を満たしていることの証明が必要です。証明の方式(第三者証明か自己申告か)は協定によって異なるため、輸出者側と早い段階ですり合わせておきます。
なお特恵関税制度は見直しが行われることがあります。適用の可否は、その時点の税関・財務省の情報で確認してください。
STEP3|食品等輸入届出
飲食用として輸入する場合、貨物到着の前後に検疫所へ食品等輸入届出を行います。オンラインシステム経由での届出が一般的です。
主な提出書類
- 食品等輸入届出書
- 原材料および添加物に関する説明書
- 製造工程に関する説明書
- 成分規格に関する試験成績書(必要な場合)
- 衛生証明書(品目・国によって必要)
- インボイス、パッキングリスト等の貿易書類
初回輸入時は、これらを一から揃えることになります。現地の工場から製造工程図を出してもらう作業に、想像以上の時間がかかることがあります。小規模な生産者ほど、書類の形式に慣れていないためです。ここは急がず、余裕を持って進めるべき工程です。
検査の種類
| 検査命令 | 違反の可能性が高いと判断された食品・国に対し、輸入者の負担で全ロット検査が命じられる。日数と費用がかかる。 |
|---|---|
| モニタリング検査 | 計画に基づき国が行う抜き取り検査。原則として貨物は留め置かれない。 |
| 自主検査 | 輸入者が任意に登録検査機関へ依頼する検査。初回輸入時に自ら行うことが多い。 |
自社の取扱品目が検査命令の対象になっていないかは、事前に確認しておきましょう。対象であれば、リードタイムとコストの見積もりが変わります。
STEP4|通関
衛生面の手続きが済んだら、税関への輸入申告です。実務としては通関業者に依頼するのが一般的です。
- インボイス、パッキングリスト、船荷証券(B/L)または航空運送状(AWB)を揃える
- EPAを使う場合は原産地証明書等を添付する
- 関税・消費税を納付する
- 輸入許可を受けて貨物を引き取る
ここで気をつけたいのが保管料です。書類の不備や検査待ちで貨物が保税地域に留まると、その分の費用が積み上がります。冷凍・冷蔵品であればなおさらです。手続きの遅れは、そのまま金額になって返ってきます。
STEP5|国内で売るための表示
輸入して終わりではありません。日本国内で販売するには、食品表示法に基づく日本語表示が必要です。一括表示に含める主な項目は次のとおりです。
- 名称
- 原材料名(使用量の多い順)
- 添加物
- アレルゲン(特定原材料等)
- 内容量
- 賞味期限または消費期限
- 保存方法
- 原産国名
- 輸入者の氏名・名称および住所
- 栄養成分表示(熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量)
実務でつまずきやすいのが栄養成分表示です。現地のラベルに記載があっても、日本の表示ルールに沿った数値でなければ使えません。分析を国内で行う必要が生じることもあります。
もう一点、賞味期限の残存期間にも注意が必要です。小売店によっては「入荷時点で賞味期限の3分の1以上が残っていること」といった商慣行上の条件があります。輸送に1か月以上かかる南米産品では、この条件が現実的な制約になります。賞味期限の設定は、契約前に確認すべき事項です。
スケジュールの目安
初めて南米から食品を輸入する場合、次のような時間配分になります。あくまで目安ですが、計画を立てる出発点にはなります。
| 工程 | 目安期間 | 備考 |
|---|---|---|
| サプライヤー選定・サンプル評価 | 1〜3か月 | サンプルの空輸にも通関が必要 |
| 規制確認・書類収集 | 1〜2か月 | 現地からの書類待ちが律速になりやすい |
| 事前教示の照会 | 数週間 | 利用する場合。内容により変動 |
| 海上輸送 | 1〜2か月 | 南米は積み替えを伴う航路が多い |
| 輸入届出・検査・通関 | 数日〜数週間 | 検査命令対象なら長くなる |
| 表示ラベル作成・貼付 | 2週間〜1か月 | 栄養成分分析が必要なら追加日数 |
初回は、検討開始から店頭に並ぶまで半年前後を見ておくと現実に近くなります。2回目以降は、書類の再利用が効くため大きく短縮できます。
よくあるつまずき
- 添加物が日本の基準に合わない:現地で普通に使われている保存料や着色料が、日本では認められていないケース。サンプル評価の段階で原材料表を確認しておけば防げます。
- 残留農薬の基準超過:産地での防除内容を事前に把握し、必要なら出荷前検査を条件にします。
- 製造工程図が出てこない:小規模生産者では書類作成の習慣がないことがあります。フォーマットをこちらから提供すると進みます。
- HSコードの見立て違い:関税率が想定と違い、採算が崩れる。事前教示で潰せます。
- 賞味期限の残存が足りない:長い輸送期間を考慮せずに設定してしまい、国内販路の条件を満たせない。
- コンテナの温度管理:冷凍・冷蔵品では温度記録が品質保証の根拠になります。リーファーの設定と記録の取り扱いを契約で明確にします。
- 現地の休暇シーズンを見落とす:年末年始やカーニバルの時期は、工場も港も動きが鈍ります。スケジュールに織り込んでおきます。
Misioneroの視点
ここまで書いてきたとおり、輸入の手続きそのものに魔法はありません。決まった順番で、決まった書類を揃えるだけです。
難しいのは手続きではなく、その手前にある関係づくりのほうだと私たちは考えています。製造工程図を出してもらう、検査に協力してもらう、賞味期限の設定を相談する。どれも、相手が「この取引を続けたい」と思っていなければ前に進みません。
南米の生産者と向き合ってきて実感するのは、書類のやりとりが滞る理由の多くが、能力ではなく信頼関係の段階にあるということです。買い叩く相手には、手間のかかる書類は後回しにされます。当然のことだと思います。
対等な取引を土台にすることは、理念の話であると同時に、手続きを前に進めるための最も実際的な手段でもあります。
南米からの輸入をお考えの企業様へ
Misionero株式会社では、南米の文化や背景を大切にしながら、現地の価値ある原料を日本へ届ける事業を行っています。南米原料の輸入、製品開発、OEM、販路づくりに関心のある企業様は、お気軽にご相談ください。
「この品目は輸入できるのか」「どの国から調達すべきか」といった初期段階のご相談も承っています。
よくある質問
食品の輸入に資格や許可は必要ですか?
食品を輸入して販売するために特別な免許が必要というわけではありませんが、品目ごとに食品等輸入届出などの手続きが必要です。また国内で販売する形態によっては、営業許可や届出が求められる場合があります。
HSコードは自分で決めていいのですか?
申告は輸入者の責任で行いますが、判断に迷う場合は税関の事前教示制度を利用して書面で回答を得られます。分類を誤ると関税額や手続きに影響するため、継続的な取引では事前に確認しておくことをおすすめします。
ブラジルとチリで手続きは違いますか?
基本的な流れは同じですが、関税条件が異なります。チリとペルーは日本とEPAを締結しており、原産地規則を満たせば協定税率を使えます。ブラジルやアルゼンチンなどメルコスール諸国とは締結されていません。
初回輸入までどれくらいかかりますか?
品目にもよりますが、検討開始から店頭に並ぶまで半年前後を見ておくと現実的です。現地からの書類収集と海上輸送が、期間の大部分を占めます。
サンプルを取り寄せるだけでも手続きは必要ですか?
販売しない少量のサンプルであっても、通関は必要です。飲食に供する目的かどうかで扱いが変わるため、目的を明確にして手配してください。植物や畜産物であれば検疫の確認も必要です。
日本語ラベルはいつ貼るのですか?
販売時点で適正な表示がなされていれば足りるため、通関後、国内の倉庫等で貼付するのが一般的です。ただしラベル作成には分析や校正の時間がかかるため、輸送中に並行して進めておくのが実務的です。
主な出典・参考情報
- 厚生労働省|輸入食品監視業務(食品等輸入届出)
- 農林水産省 植物防疫所|輸入植物検疫
- 農林水産省 動物検疫所|輸入検疫
- 税関|実行関税率表 / 事前教示制度
- 外務省|経済連携協定(EPA)・自由貿易協定(FTA)
- 消費者庁|食品表示法・食品表示基準
- JETRO|日本の輸入制度・手続きQ&A